「子どもに英語を聞かせたいけれど、何から始めればよいかわからない」「英語教室や教材が必要なのだろうか」と迷っている方もいるのではないでしょうか。
幼児期は、さまざまな音や言葉に親しみやすい時期です。ただし、早く始めるだけで将来の英語力が決まるわけではありません。子どもの興味や発達段階に合わせ、親子で無理なく楽しめる形を続けることが大切です。
この記事では、一般に「英語耳」と呼ばれる力の考え方や、家庭で取り入れやすい方法を年齢別に解説します。動画や聞き流しを利用するときの注意点、日本語との関わり方についても確認していきましょう。
幼児の英語耳作りとは
「英語耳」は、医学や言語学における正式な専門用語ではありません。一般的には、英語特有の音、リズム、イントネーションに慣れ、聞こえてくる言葉の違いを捉えやすくなることを指して使われています。
本記事では、英語の音やリズムに親しみ、聞く力の土台を作る取り組みを「英語耳作り」と表現します。
日本語と英語には異なる音がある
日本語と英語では、言葉を区別するために使われる音の種類や組み合わせが異なります。たとえば、英語の「right」と「light」の最初の音は、英語では異なる音として扱われますが、日本語では同じラ行に近い音として捉えられることがあります。
また、「th」など、日本語にはそのまま対応する音がないものもあります。幼児期からさまざまな英語の音を聞くことは、こうした違いに親しむ機会になります。
英語の音を聞くだけで意味がわかるわけではない
英語の音に慣れることと、単語や文章の意味を理解することは同じではありません。音を聞き分ける力に加えて、語彙、文法、会話、読み書きなども少しずつ身につける必要があります。
幼児期の英語体験は、将来の英語力を保証するものではありませんが、英語の音に抵抗感を持たず、歌や会話を楽しむきっかけになる可能性があります。
幼児の英語耳作りは何歳から始めるべきか
英語に触れ始める年齢に、すべての子どもに共通する正解はありません。乳児期から英語の音に触れる家庭もあれば、幼稚園や小学校に入ってから始める家庭もあります。
乳児期はさまざまな音に気づきやすい時期
乳児は成長とともに、日常的によく聞く言語の音に慣れていきます。生後6〜12か月頃には、普段聞いている言語の音を捉えやすくなる一方、日常的に聞かない言語の音の違いには気づきにくくなる傾向が報告されています。
ただし、これは「乳児期を過ぎると英語が身につかない」という意味ではありません。幼児期、学童期、成人後からでも、学習や経験を重ねることで英語の聞き取りや発音を学ぶことは可能です。
早く始めることだけを目標にしない
開始年齢だけでなく、どのような内容に、どの程度、どのような関わり方で触れるかも重要です。長時間英語を流し続けるよりも、短い歌を一緒に歌ったり、絵本を見ながら話したりするほうが、子どもにとって意味のある体験になりやすいでしょう。
「今からでは遅い」と焦る必要はありません。子どもが興味を持ちやすい方法から、無理のない範囲で始めることが大切です。
日本語と英語では音やリズムがどう違うのか
言葉を区別する音が異なる
英語には、日本語では独立した音として扱われない音の区別があります。そのため、英語に触れる経験が少ない場合、聞こえた英語を近い日本語の音として捉えることがあります。
英語の歌、絵本、会話などを通じてさまざまな発音に触れることは、英語の音の違いに気づく機会になります。ただし、聞かせるだけで必ず聞き分けられるようになるわけではなく、反応や習得のペースには個人差があります。
言葉のリズムが異なる
日本語は「拍(モーラ)」と呼ばれる単位を基準に、比較的一定のリズムで話される傾向があります。一方、英語は強く発音される部分と、弱く短く発音される部分との差が比較的大きい言語です。
英語の歌やチャンツに合わせて体を動かすことは、英語らしいリズムや音のつながりに親しむ方法のひとつです。
家庭で英語の音に親しむための3つの基本
1.親子のやりとりを取り入れる
英語の音声を流すだけでなく、一緒に歌う、指をさす、動きをまねるなど、親子のやりとりを加えてみましょう。
乳児を対象とした研究では、録画や音声だけの条件よりも、人と対面してやりとりする条件で外国語の音の学習が見られた例があります。ただし、すべての年齢や学習内容に同じ結果が当てはまるとは限りません。
英語が得意でない保護者でも、音声に合わせて手をたたいたり、絵を指さしたりするだけで構いません。発音を完璧に教えようとするより、子どもと一緒に楽しむことを優先しましょう。
2.短い内容を繰り返す
毎日違う教材を使うよりも、子どもが気に入った歌や絵本を繰り返すほうが、音やフレーズに親しみやすい場合があります。
- 朝の支度中に同じ英語の歌を一緒に歌う
- お気に入りの英語絵本を繰り返し読む
- 同じあいさつを生活の中で使う
- 歌に合わせて同じ動作を繰り返す
長時間続ける必要はありません。子どもが楽しめる範囲で、生活の一部として取り入れてみましょう。
3.睡眠や遊び、家族との会話を優先する
幼児期には、睡眠、外遊び、身体を動かす時間、家族との会話なども重要です。英語の動画や音声によって、これらの時間が少なくならないように注意しましょう。
英語を流し続けることよりも、子どもが人と話す時間や、自分で遊びを広げる時間を確保することが大切です。
家庭でできる幼児の英語耳作りの方法
英語の歌やチャンツを楽しむ
英語の歌は、言葉のリズムやイントネーションに親しみやすい方法です。「Head, Shoulders, Knees and Toes」のように、身体を動かしながら楽しめる歌は、音と動作を結びつけやすくなります。
チャンツは、英語の単語や短いフレーズをリズムに合わせて繰り返す活動です。保護者も一緒に手拍子をしたり、動きをまねたりすると、親子の遊びとして取り入れやすくなります。
英語の絵本を一緒に見る
英語の絵本では、すべての文章を正確に読む必要はありません。絵を指さしながら単語を言ったり、音声付きの絵本を一緒に聞いたりする方法もあります。
読んだ後に日本語で「何が出てきたかな」「どの動物が好き?」と話すことも、内容への理解や親子のコミュニケーションにつながります。
簡単な英語を生活の中で使う
日常の決まった場面で、短い英語を使ってみる方法もあります。
- 朝に「Good morning」
- 食事の前に「Let’s eat」
- 物を渡すときに「Here you are」
- 寝る前に「Good night」
子どもに返事や発音を強制する必要はありません。聞いているだけの時期もあるため、反応がなくても焦らず続けましょう。
子ども向けの動画を親子で見る
英語の動画は、音と映像を結びつけて楽しめる教材のひとつです。ただし、動画を長時間流し続けることを英語学習の中心にするのは避けましょう。
利用する場合は、年齢に合った穏やかな内容を選び、可能な範囲で保護者も一緒に見ます。「犬が出てきたね」「一緒に歌ってみよう」などと声をかけることで、受け身の視聴だけになりにくくなります。
乳児期は動画を主な方法にせず、歌いかけ、語りかけ、絵本などの対面での活動を中心にしましょう。視聴時間については、年齢別の公的なガイドラインや家庭の生活リズムも参考にしてください。
文字に興味が出たらフォニックスに触れる
フォニックスは、英語の文字や文字の組み合わせと、発音との関係を学ぶ方法です。主に、英単語を読んだり書いたりする力の基礎として使われます。
フォニックスは英語の音を聞く活動そのものではありません。子どもがアルファベットや文字に興味を持ち始めたら、歌や絵カードを使って遊びの一部として取り入れるとよいでしょう。
英語の音は日本語のカタカナでは正確に表しにくいため、「Aはア」「Bはブ」のようにカタカナだけで固定して教えないことも大切です。音声教材なども活用しながら、実際の音を一緒に確認しましょう。
年齢別に見る英語耳作りの方法
0〜1歳は歌いかけや語りかけを中心にする
0〜1歳は、保護者の声や表情、動きに反応しながら言葉に親しむ時期です。英語を勉強として教える必要はありません。
- 英語の子守歌を保護者が歌う
- 音の繰り返しが多い絵本を一緒に見る
- 手遊び歌に合わせて身体を動かす
- 簡単なあいさつを日常に取り入れる
録音音声を流すだけにせず、抱っこしながら歌う、目を合わせる、笑いかけるといった対面での関わりを中心にしましょう。
2〜3歳は歌と動作を組み合わせる
2〜3歳頃になると、歌に合わせて動いたり、聞こえた言葉をまねたりする子どもが増えてきます。身体の部位、動物、色、食べ物など、身近なテーマを扱う歌や絵本が取り入れやすいでしょう。
- 歌に合わせて手や身体を動かす
- 絵を指さしながら単語を聞く
- 同じ絵本や歌を繰り返す
- 子どもが好きな遊びに英語を少し加える
発音を訂正したり、何度も言わせたりする必要はありません。子どもが声を出したときは、正確さよりも参加したことを受け止めましょう。
4〜6歳は歌、会話、文字遊びを組み合わせる
4〜6歳頃になると、文字や言葉の意味に興味を持つ子どもも増えてきます。歌や絵本に加えて、短い会話や文字遊びを取り入れやすい時期です。
- 色や数を英語で言う遊びをする
- 絵を見ながら簡単な質問をする
- 英語の物語を一緒に楽しむ
- 文字に興味があればフォニックス遊びを取り入れる
「What color is this?」などの質問を使う場合も、正解を求めすぎないことが大切です。英語で答えられなくても、日本語で会話を続けながら内容を楽しみましょう。
英語教室や高価な教材は必要なのか
英語の音に親しむために、英語教室や高価な教材が必ず必要なわけではありません。家庭にある絵本、無料または手頃な音声教材、子ども向けの歌などから始めることもできます。
一方、家庭だけでは英語で人とやりとりする機会を作りにくい場合は、英語教室が交流の場になることもあります。教室を選ぶときは、次の点を確認しましょう。
- 子どもの年齢や発達段階に合っているか
- 歌や遊びだけでなく、講師とのやりとりがあるか
- 子どもが安心して参加できる雰囲気か
- 家庭で無理なく復習できる内容か
- 費用や通う頻度が家庭の負担にならないか
教材についても、価格の高さだけで効果が決まるわけではありません。子どもが興味を持ち、繰り返し使いやすいものを選ぶことが大切です。
幼児の英語耳作りで注意したいこと
複数の言語に触れること自体が言葉の遅れを起こすわけではない
日本語と英語など、複数の言語に触れること自体が、子どもの言葉の混乱や発達の遅れを引き起こすわけではありません。子どもが言語を混ぜて使うことも、複数の言語を学ぶ過程で見られることがあります。
家庭では、保護者が無理なく豊かに話せる言語で、たくさん会話をすることが大切です。英語を取り入れるために、日本語での会話や読み聞かせを減らす必要はありません。
子どもに発音や返事を強制しない
英語を聞いていても、すぐに声に出さない子どももいます。反応がないからといって、聞いていないとは限りません。
繰り返し言わせたり、間違いを強く訂正したりすると、英語への苦手意識につながることがあります。子どもが興味を示さない日は休む、別の歌や絵本を試すなど、柔軟に進めましょう。
聞き流しだけに頼らない
英語の音声を流すことは、英語に触れるきっかけにはなります。ただし、音声を流しているだけで、単語の意味や会話の使い方まで身につくとは限りません。
一緒に歌う、絵を指さす、聞こえた内容について日本語で話すなど、子どもが人と関われる活動を組み合わせましょう。
言葉や聞こえが心配な場合は専門機関に相談する
日本語と英語の両方で言葉がなかなか増えない、呼びかけへの反応が少ない、聞こえにくそうな様子があるなど、発達や聞こえが心配な場合は、英語を続けるかどうかだけで判断しないことが大切です。
小児科、耳鼻咽喉科、自治体の乳幼児健診・子育て相談窓口、言語聴覚士などに相談し、子どもの全体的な様子を確認してもらいましょう。
幼児の英語耳作りは親子で楽しめる方法から始めよう
一般に「英語耳作り」と呼ばれる取り組みは、英語の音やリズムに親しみ、聞く力の土台を作ることです。幼児期はさまざまな音に触れやすい時期ですが、早く始めるだけで将来の英語力が決まるわけではありません。
0〜1歳は歌いかけや語りかけ、2〜3歳は歌と動作、4〜6歳は会話や文字遊びを加えるなど、発達段階に合わせて取り組み方を変えてみましょう。動画や聞き流しだけに頼らず、親子で歌う、絵本を見る、簡単な言葉を使うといったやりとりを組み合わせることが大切です。
英語教室や高価な教材は必須ではありません。まずは子どもが好きそうな英語の歌を一曲選び、親子で一緒に楽しむことから始めてみましょう。

